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小田原の海沿いにあるラ・ナプールは、ゆっくりと訪れたい小粋なフランス料理店だ。真っ白な外観、店先のデッキにセットされたアイアンのテーブルとイスに磯の香りが漂う。白を基調とした清涼感あふれる店内とあたたかいライト・アップは、洗練された中にもくつろげる雰囲気。まさにコート・ダジュールを思わせる。それもそのはず、店名のラ・ナプールは、コート・ダジュールのカンヌから海岸沿いを西に7-8kmほど行ったところにある港町だ。かつては、
三ツ星レストラン、ロアジスがあった場所。
同店を1997年4月にオープンオした成澤シェフの経歴は異色。日本で料理に携わってから海外に行くキュイジニエが多い中、彼はまったく未経験のまま高校卒業後ヨーロッパに渡る。「食事を中心とした楽しい空間を演出したい」と考えていた彼は、人を感動させる味と空間を自分の眼で見て肌で感じたいと旅立つ。フランス、イタリア、スイスの名だたるレストランや地中海の観光船で働きながら過ごした滞在期間は延べ8年。その長い滞在で彼が得たものは「グラン・シェフのルセットではなく、彼らが生み出した味そのもの。そして心地よい空間の演出」。感性の研ぎ澄まされた成澤シェフの作り出す料理は挑戦的な中にも優しさが感じられる。
私たちが、ラ・ナプールを訪れたのは残暑の厳しい9月中旬。東京からの道中、渋滞にはまり大幅に遅れた到着となってしまった。恐縮する私たちを、明るく気さくな笑顔で迎えて下さったのは成澤シェフの奥様。席に通
され、カラカラの喉を癒してくれるシャンパンとプロヴァンス産のグリーン・オリーブ・ピショリーヌに胃袋が刺激される。メニューをのぞくとアニョーのラベンダー風味やキノコ類が登場し夏から秋への移り変わりを感じさせる構成だ。
今回は、その中の一品、夏のスペシャリテ「ラングスティーヌのサラダ」をご紹介。深いガラスの器にスプーンを入れていくと、次から次へと食材が顔を出す。キャビア、トマト(懐かしい青い香り)、プリッとしたラングスティーヌ、とろりととけるアボカド、香ばしい松の実、トマトのジュレ、、、入れ替わり立ち代り訪れる楽しい味わいの中に、ホッとするような懐かしさが感じられる。仲間の1人、フランス育ちの通
称ニコタンは、「マミー(おばあちゃん)の味がする」と、ポツリ。
食後に、香り高いエスプレッソを頂きながら、メニューを読み返すと、我ながらその食べっぷりに感心(取材も兼ねて訪れた私たちは、あれもこれも食べたい!とワガママを散々に言ったため、前菜3品、魚料理1品、肉料理2品、アヴァンデセール、デセールと、なんと計8品の超フルコース)。ただ、不思議なことに大食した後の身体に残るのは心地よさ。その秘密を探るべく、「料理をする上でのこだわりは?」と問い掛けた私たちに、しばらく考えた末、「あったかみかな」と答えた成澤シェフ。洗練された盛り付けの中にあるホッとするような懐かしい味、身体に優しい味わいのルーツを発見させてくれる一言でした。
そして、彼のもう一つのこだわりは「食材の素質」。「素材の良さを求めて原価計算が出来ないんですよ」と、言いながら旬の食材購入ルートを嬉々として話す。海が目の前という立地条件から、さぞや新鮮な魚介類を料理に生かせるだろうと思いきや、「この立地条件は全く関係ない。物流のノウハウが発達している世の中、どんな山の奥であろうと活きた魚を手に入れることは可能。重要なのは、肉同様にいかに魚を熟成させ、魚自体の持ち味を120%引き出す調理法。絞めた魚を直ぐに食べても上手くはない。これは和の世界から学んだ技法。そして、魚の特性を理解し、それぞれ最良の産地を求めること。例えば、スズキは真鶴湾の波の荒いところで獲れたものが最高」というシェフ。
白トリュフの時期には自らイタリアに出向く。自分の目で選りすぐった白トリュフづくしのメニューをつくる。秀逸の白トリュフが放つ魅惑的な香りは、朝、レストランのドアを開けた瞬間に鼻をついてくるほど。2000年度のイタリア、アルバ産白トリュフコレクションは10月17日より繰り広げられています。
旬の食材を最大限に演出してくれるラ・ナプール、次回は、この店独特のゆっくりと寛いだ空間を、海の風と太陽の光を浴びながらデッキに出てゆっくりと楽しみたいと思う。そして、最初に口にした食べものが黒トリュフという成澤シェフジュニア(生後8ヶ月)の行く末にも期待大。
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