|
文京区白山の小さな路地を少し上った所にあるラ・ベル・ド・ジュール。
一歩店内に入ると路地手前までの車の往来が激しい街並みとは全く違った空間がある。深みのある色調の木目に、深紅のカーテン、そして大きな鏡を使ったベル・エポック調の造り。その店内の真ん中には、常に色鮮やかな花が活けられ華やいだ雰囲気を演出している。また、テーブルは、十分な間隔をおいて置かれており、ゆったりとしている。
同店がオープンして既に10年。その間、ラ・ベル・ド・ジュールの変貌ぶりを楽しみながら訪れているお客様も多いはず。かく言う私も、その一人。数年前、私たちの会社も白山にあり、お昼時にぶらぶらと歩いていた時に入り込んだ路地で見つけたのが出会い。嗅覚に刺激を受けて、そのまま食したランチにサービスされたカナール・オ・ミエル。繊細な盛り付けと丁寧に料理された深津シェフの最初の逸品は、今でも忘れられないほど。
それが縁で、「地方料理賞味会」を一緒に開催するまでとなり、バスクやアルザス地方のシェフを日本に招き、深津シェフとの競演料理を披露。地方料理といえば皿にたっぷりと盛られた豊かな家庭の食卓が目に浮かぶが、深津シェフは地方料理独特のあたたかみを残しながらも繊細なレストランの皿に仕上げてしまう。このイベントを通して、新しい料理の誕生に喜びと驚きを感じながら、料理に対するシェフのハングリーな精神を大いに感じたものである。
今回、久しぶりにお会いしたシェフは、昔に比べて穏やかな表情。ただ、「料理、サービス、空間、全てが揃っているヨーロッパの三ツ星レストランの在り方を受け継ぎたい」という言葉からは、以前にも増して妥協を許さない姿勢と、完成度の高いレストランを求めている意気込みがひしひしと伝わってくる。そのため、客席も減らしサービスが行き届くようにしている。また、ワイン・リストも全て見直し、料理と同じく一級品のみを揃えている。もちろん、レストラン自体の収入が減ってしまうのは当然。それでも、そうした姿勢をとっている彼なりのこだわりを称賛したい。
三ツ星レストランに向けて躍進中のラ・ベル・ド・ジュール。ハレの日に、大事な人とゆっくりと訪れたいお店です。
|